ただ“維持”していくための『メンテナンス』なら
こういう発想は出て来ないのかも知れません。


匠なるコテ使いで、遠慮がちに目立たない壁を
塗っていらっしゃるのは、このお家の家主さん夫婦。
「なかなかの鏝使いでした」吉原談

前にもご紹介した、こういう遊び心をお持ちの
ご夫婦なので、撫で方ひとつで表情が変わる
今回の塗り方には大変興味を持たれたようです。
私も鏝塗りの作業は、真似事でやった事があります。
体全体と腕、手首の使い方と力の入れ具合で
色んなテクスチャーを表せますが、平らに均そうとしたら
相当な集中力と技量が要ります。
上手に鏝目をつける腕は、いかに平らに均せるかの
腕と相まっている事に気付いた経験でもありました。

現代風の建物では、漆喰を鏡のように平らに仕上る
コテさばきよりも
「いかにアーティスティックに見せるか」
という腕の方が見せ所になっているようでもあります。
『官』が付く高級な『左官』の職も
現代ではその芸術性が尊ばれて、あらゆる建築の場で
活躍しているようです。

完成したご夫婦の壁です。
味わい深い出来になったのではないでしょうか。
福田 聡