福田聡の輸入住宅修繕日記

「♪よ～～～が・さ・しゅうりっ・」


二部音符のリズムで、この言葉を繰り返し言い続けながら
歩くおじさんが、『洋傘修理屋さん』であると気付いたのは、
そのおじさんを見かけなくなるちょっと前の事でした。

記憶の限りでは、小学校１～２年生の頃だったと思います。

呼び止めたら、おじさんは壊れた傘の修理をしてくれます。

おじさんの手は「魔法の手」で、折れてしまった
傘の骨や、破れて外れてしまった布地の部分を、
慣れた手つきで、いとも簡単に直していきます。

僕は、目の前で展開されるその寸分の隙もない、
計算され尽くした作業を見ているのが大好きで、
ある時は、壊れてもいない傘をわざと壊して
おじさんに修理をお願いした事もありました。

おじさんは、僕をじろりと睨んで

「わざとしたやろ」

と言いました。


涙目の僕に、

「物は大事にせんば」

といいながら、やっぱり修理してくれました。


ある時、チェーンが壊れた自転車を引いて歩いていると、
いつもの言葉を大きな声で叫びながら歩いているおじさんと、
出くわしました。

おじさんは、チラッと自転車を見るなり
「直してやるけん」と言いながら、
やっぱり鮮やかな手つきで自転車を直してくれました。



何でも直すそのおじさんは、
今でも僕の憧れの人なのです。


福田　聡